TOKON10実行委員会公式ブログ

第49回SF大会TOKON10実行委員会の公式ブログです。
開催日程:2010年8月7日(土)〜8日(日)
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東京SF大全19 『東京日記』
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    『東京日記』(小説、内田百痢岩波文庫、1938)
    東京日記書影

     「世界SF全集」の第34巻「日本のSF古典篇」に収録されているぐらいだから、SFファンも結構親しみを覚える作品なのだろう。夢ホラーとでもいうべき一連の不条理小説は現在でも高い人気を誇るが、中でも二十三の超短編で構成される本作品は、具体的な東京の地名が大量に登場するという点でかなり特異だ。

     百里離曠蕁七郎酩覆梁燭は時代も場所も曖昧で、固有名詞がほとんどない。その曖昧さが夢の手触りを強めている。だが「東京日記」はそうではない。ここで試みられているのは一種の犁偽記憶実験瓩世箸い┐襦

     ご存知の方もいるだろう。米の心理学者エリザベス・ロフタスによる「ショッピングモールの迷子」実験である。
     被験者の子供時代の体験4件が書かれた小冊子が配られる。その中にひとつだけ「ショッピングモールで迷子になった」という事実ではない項目が混じっている。だが被験者は、ありもしない虚偽の記憶を、驚くべき迫真性とともに思い出してしまうのである。

     百里ここで行ったのは「あなたが見た夢の記憶」を捏造する試みだ。いつもながらの夢の最大公約数めいた描写に、少しだけ非常に具体的な地名をちりばめる。皇居の堀から這い出してくる巨大ウナギや四谷見附方面へ超高速で駆け去る神輿、噴火しても誰も気に留めない富士山。百里了遒澆魯蹈侫織垢亮存海凌慎佞任△襦

     地名だけではなく路面電車や防空演習など、現在ではあり得ない風俗も盛り込まれている。それでもあなたは「こんな夢を見たはずだ」と確信してしまう。あなたが東京に住んでいなくても。東京をまったく知らないとしても。(高槻真樹)

    日比谷交差点

    (作品の舞台のひとつ日比谷交差点)
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