TOKON10実行委員会公式ブログ

第49回SF大会TOKON10実行委員会の公式ブログです。
開催日程:2010年8月7日(土)〜8日(日)
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東京SF大全25 『キャベツ畑の遺産相続人』
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      佐藤史生さまのご冥福を、心からお祈り申し上げます。


    (少女マンガ・萩尾望都・1973年)
    (初出〈週刊 少女コミック〉・1973年15号)→『精霊狩り―傑作短編集』小学館文庫・1976年→『萩尾望都作品集 第10巻 キャベツ畑の遺産相続人』・1977年(小学館)→『この娘うります!』白泉社文庫・1996年) 



     今日は犹劼匹發瞭瓩任△襦
     この物語は、ひとりの子どもがキャベツ畑の中を歩いていくところから始まる。

     キャベツ畑に囲まれた館がある。3人の女性がそこで共同生活を営んでいる。その名は爛献隋璽献甅爛檗璽献瓩修靴騰爛廛螢鵝Ε僖き瓠H狃たちは「相続すべき遺産が送られてくる」という通知をもらい、期待して待っていた。
     その牋篁梱瓩箸蓮屬垢辰んぴんの遺児」のター・ブー少年であった。
    「かわいそうな みなしごを 寒空に 追い出したり しないでしょ?」
     哀願に負けた女性3人は、ター・ブー少年を家に住まわせる。
     日ならずして、3人のおばさんたちの正体を、ター・ブー少年は知ることになる。
     天井にドアがある! かぶっている帽子が突然に爆発する!! 夜中にキャベツの大群が転がりながら窓の外に押し押せる!!!
    「ああ ほら! そうそうにあの子にばれちゃったわ! あたしたちが魔女だってこと!」
     ター・ブーは驚きながらも、次のような言葉を返す。
    「それ 超心理学といって 超能力のことだよ」
     だから、これはSF瓩覆里任△襦しかも狹豕SF瓩任△襦
     萩尾望都は、この作品の成立について、次のように語っている。

     ある夜、ワイワイ集って話をしていたとき、サトサマ(佐藤史生のこと。宮野註)が、「真夜中に向かいのキャベツ畑からキャベツがごろごろころがってトントンとやってきて……」
    「ワー、おもしろい。その案もらっていい?」
    「いいよ」というので、キャベツの転がる話が出来、いいだしっぺが、キャベツを呼ぶ魔女となったのだ。
    (萩尾望都「ド・サト奇談」…佐藤史生『金星樹』解説(奇想天外社)1979年)

     この爛錺ぅ錺そ犬辰届辰鬚靴討い伸畩貊蠅箸蓮当時、萩尾望都が志を同じくする仲間と共同生活を営んでいたアパート(2軒長屋のうちの一戸)で、それは東京都練馬区南大泉にあった。1970年代における少女マンガの革新は、この場所から始まったことが知られている。
     少女マンガの革新とは、たとえば、本格的なSFを描くことを可能にしたことだ。これは、彼女たちの活動の成果のひとつである。
     萩尾望都は『精霊狩り』(1971年)の27ページ目の絵の中に、ローマ字でさりげなく次のように記している。

     WATASIWA S・F GA SUKI…DEMOONNANOKONIWA S・F GA WAKARANAINODA TO IUNODESU.HONTOKASIRA……?
     
     解読(?)すると、こうなる。
     私はSFが好き…でも狃の子瓩砲SFがわからないのだというのです。ホントかしら……?
     少女マンガ家がSFを書きたがっても「女の子にSFはわかりませんよ」と編集者に言われてしまう、という事情が、当時はあったのだということがうかがえる。
    『精霊狩り』といえば、その続編『みんなでお茶を』(1974年)の冒頭2コマ目の絵にも次のような書きこみがなされている。

     MOKUSITE KATARAZU BAKA NI TUKERU KUSURI WA NAI

     この静かにして激しい怒りのほこ先は、どこに向けられたものだったのだろうか?

     練馬区大泉にあったその場所に集った彼女たちは猖盻瓩世辰拭2晋里覆蕁普通ではない能力を持っていたから。
     彼女たちは「遺産相続人」だった。遺産は倏塾呂鮖ちすぎた畛劼匹發任△襦
     そう、実は、そのター・ブー少年こそが、世界の存続にかかわるような狡暁塾廊瓩了ち主だった。
    「末おっそろしい…! あの子にあんな力があるとは思わなんだ」
     驚く魔女たちに、ター・ブーの養父は言う。
    「おっそろしくはありませんよ……! 正しいあつかいかたを指導していけばね……! 少なくともはずみにしろ全世界を消すようなドジは二度とふませずにすみます」
     かくて、狎気靴い△弔いかた瓩鮨箸砲弔韻蕕譴襪任△蹐Γ横矯个砲覆詁まで、その力は封印され、ター・ブーは魔女たちによって育てられることになる。
     ラストのコマで、ター・ブーはつぶやく。
      
     ―ぼくはまだ子どもだけど、今に大きくなって……

     ター・ブーが爛織屐辞瓩任覆なる日が今に来る。
     多分、魔女たちは、様々な爛織屐辞瓩膨戦しようとしていたのだ。
     うら若き女性たちが共同生活を営み創作に打ち込むというのも、もちろん爛織屐辞瓩任△辰拭なぜなら、それは狎舷瓩貿悗鮓ける行為であったから。
     3人のおばさんの名の出典は「マザー・グース」である。萩尾望都は、平野敬一『マザー・グースの唄 イギリスの伝承童謡』(中公新書275)を読んで「マザー・グースがたいそう好きになった」と語っている。(草思社『マザー・グースのうた 第4集』付録「クック・ロビンは一体何をしでかしたんだ」)
     平野敬一の本の43頁には、原詩とともに次の狠川俊太郎訳瓩載っている。『ポーの一族』中の「一週間」でアランが口ずさむアレである。

      ジョージィ・ポージィ プリンにパイ
      おんなのこには キスしてポイ
      (Georgie Porgie pudding and pie
       Kissed the girls and made them cry)

     この歌詞の名前を持つ魔女たちが、黙して語らず、キャベツを召喚したり牋篁坐蠡貝瓩鬚靴燭蠅靴董育てあげてみせたのは犧酩吻瓩任△辰拭
     犹劼匹皚瓩蓮▲ャベツから生まれたっていいのだ。
     現在の我々はもちろん、その犹劼匹皚瓩いかにすぐれたものに育ったかをを知っている。
     キャベツは、日々狹豕瓩箸いε攵蹐頬かに育っている。
     狹豕SF瓩魄Δ垢覯罅垢癲屮ャベツ畑の遺産相続人」である。                        
                                (宮野由梨香)

     

    (その場所は「小関」バス停から徒歩1〜2分のところだったという。中央線「吉祥寺」駅と西武池袋線「保谷」駅をつなぐバス路線の途中に「小関」はある。いわば、マンガ家が多く住まうことで知られる吉祥寺のなお奥つ方に、その場所は位置している。)



    (「小関」バス停近く、「練馬区南大泉」には、今もキャベツ畑がある。 その場所の近くには「鉄塔」があったというから、おそらく、この付近であろう。)
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