TOKON10実行委員会公式ブログ

第49回SF大会TOKON10実行委員会の公式ブログです。
開催日程:2010年8月7日(土)〜8日(日)
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東京SF大全40『デュラララ!!』
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     成田良悟著『デュラララ!!』はアスキー・メディアワークスの電撃文庫レーベルより2003年に第1巻が発行され、2010年までに8巻が刊行され継続中の物語だ。
     この物語は、池袋における、生ける都市伝説・首無しライダー(女)を軸に、一風変わった一般市民に見える怪人たちの、何組かの三角関係が回転し、絡み合い、噛み合う様を、スピード感ある群像劇として描いている。
     軸になる首無しライダーは、切り取られ持ち去られた自分の首を探す放浪者だ。
     主要な三角関係の第一は、池袋の高校に通う男女三人組で、お互いに好意を抱いているのだが、実はそれぞれが池袋の闇の世界における集団と関わりがある。一方にダラーズと名乗る目的不明・構成員不明・リーダー不明・旗幟不鮮明のグループが暗躍する。ダラーズが正体不明、色で言えば「保護色」の集団とすれば、旗幟鮮明なカラーギャングは抗争、非合法商取引という目的方法ともに明確な集団で常にどこかと対立する。そこに姿なき『切り裂き魔』集団がいかなる理由があってか、抗争に介在してくる。組織はそれぞれの敵からの攻撃によって自動的に抗争を始める。第一の三角関係の高校生たちは友情を守ろうとするが、組織は自身の意思で彼らを抗争に巻き込む。
     主要な三角関係の第二は、裏稼業に生きる情報屋と闇医者と喧嘩屋の青年たちである。愛多憎生(可愛さ余って憎さ百倍)の末に犬猿の仲である。
     彼ら七人を中心に怪人たちが毎回登場しては、暴力の嵐が吹き荒れるのが、このシリーズの特徴である。
     彼ら怪人の特徴は、自他の界面が定まっていない、時に人間としてのタガが外れているところにある。狂言回しとなる首無しライダーなど、人の形の中身が漏れ出してくるなどの象徴性を抱えているし、ほぼ主人公の高校生・竜ケ崎帝人は歳相応にガラスのようにもろくも繊細な感受性と透明な正義感を抱えながら、闇社会における力と関わりを持つ。この内面のこわれやすさと、外界との境界の剣呑さがこの作品の特徴であり、それは、都市と個人とのインターフェイスの問題を表していると、私は考える。
     繁華街・悪所という観点で見ると、新宿と池袋は似ている。違う所は、新宿は「ここから先、郊外が始まる」街であるのに対し、池袋は「ここから内、都会が始まる」街だ。つまり、新宿が田園への出口なのに対し、池袋は都会への入り口だ。
     例えれば、池袋は都会の渚。田舎から流れてきたコアセルベートは生物として環境とのインターフェイスを確立するために、殻を被ったり、刺を持ったり、時にははじけて外部を呑込んだりして、確固たる生物としての独自性を獲得していく。
     壊れやすく軟らかくもろい内部を抱えて、過酷な環境で生きていく界面や表象を獲得する。しばしば、その過剰適応が常識のタガの外れた怪物に彼ら青少年を変身させる。
     暴力に支配された街。現実の池袋はともかく、本作中の池袋はそういう街だ。それはしかたない。なぜなら、ライトノベルの読者に性的充足は禁止されているから。エロスの常識的健全成長を外的規範にすれば、読み手の欲望はバイオレンスのエスカレーションを求める。この作品では性愛は禁忌。ゆえに徹底的に壊す。純愛と暴力。その歪みこそがこの作品の味わいであり、そして規範に拠って立つ都市・東京の歪みをも浮かび上がらせる。

    (鼎元亨)
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